我々の工場には約2,000台の電動機が稼働しております。今は電気専門屋に依頼してメンテナンスを実施しておりますが,電動機は機械設備の大切な動力源ですのでわれわれ機械屋ができる点検などは自分たちで実施して,設備の信頼性をあげると同時にメンテナンスコストを下げたいと思います。機械屋でもできる点検がありましたら教えてください。
解説します。
機械設備担当が実施する電動機の点検は,低圧誘導電動機に限ることにしましょう。
電動機の点検は,過去の経験や製造者の助言によって決められた周期で点検方法も含めて,画一的に実施されていました。このやり方では,多くの機器の分解・組立・点検・補修などを限られた時間と場所で実施しなくてはならず,作業ミスの危険も含んでおり,さらに部品交換は,自動的に実施されるので多くの部品費と取替工数を必要とし,決して保全費を少なくする方向ではなかったと思えます。
ここで,図1に示す,低圧誘導電動機のトラブルを見てみると他の機械設備と同様に,軸受に関するものが非常に多いことが分かります。
図1 低圧誘導電動機のトラブル分類 |
したがって,機械屋としては電動機の軸受周辺を点検することが大切であり,これにより大部分のトラブルを事前に防止することが可能となります。
すなわち,(1)振動と騒音,(2)温度,(3)軸受からの油漏れを点検し,さらに(4)電動機を取り巻く環境を点検することになります。
軸受の故障の原因にはグリースなど潤滑剤の不適(量,質,温度),組み立て・据付不良,軸受選定不良などがあります。振動・騒音の原因には軸受の事故のほかに,カップリング,ファンなどからの異常音など機械的なものがあります。その他電気的な振動として,設計に起因した磁気回路の組み合わせ不適による電磁振動や回転子と固定子の空隙の狂い,鉄心の締め付けのゆるみなどがありますが,これは電気専門屋に任せることになります。
温度上昇は軸受けトラブル以外に色々複雑な問題を含んでおりますので,電気専門屋に調査を依頼してください。電動機を取り巻く環境については,電動機設置の条件がありますので,これに適合しているかを調査してください。
一般に機械設備と同じ環境に設置されている電動機は高温,高湿度の最悪の条件の中で運転されている恐れがあります。これは電動機の原理を成立させる原則のひとつを離脱していることになり,故障の原因となります。基本的な間違いですから修正してください。
コンディションモニタリングBOX
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解説 コンディションモニタリング
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