昨年のことです。夏になり,気温上昇とともに,潤滑油の温度が下がらなくなりました。強制循環給油のラインにはオイルクーラーが設置してあります。このオイルクーラーの冷却能力が低下してきたと判断し,同じタイプのものを一台増やして,2台運転としました。予定通り温度は下がり,安心していたのですが,今年になり再び潤滑油の温度が上昇してきました。早速,もう一台増設し,図1にあるように3台運転としました。しかし,今度はぜんぜん温度は下がらず,かえって上昇し始めたようで,オイルクーラー前後の温度差は0となり,まったく機能していないことが分かりました。なぜでしょうか。そしてどのような対策をとったらよいでしょうか。
解説します。
オイルクーラーのメンテナンスについて
オイルクーラーは,ほかの設備と同じように,要求仕様に合わせて設計されて取り付けられているものです。安易に増設して簡単に解決できるものではありません。
図1 オイルクーラーの設置例 |
原点に戻り,初期の仕様との違いを確認し,システム全体を対象にして,原因を追究してください。とりあえず,クーラーを3台取り付けたときの状態を考えて見ます。
クーラーの冷却面積を増やすために潤滑油の通過する断面積が増加してしまったことになります。その結果,クーラー部の通過速度が低下することになります。そのために図2に示すように,冷却管に近い油はゆっくり冷却され,流れにくくなって停滞し,冷却管から遠い油は暖かいまま通り過ぎていってしまったと考えられます。
図2 オイルクーラー内部の模式図 |
オイルクーラー内部はある速度が必要で,その流速で撹拌作用し,均一に冷却されるものだと思います。
当該設備に関してまず,オイルクーラー能力が理論的に適切であるか調査してください。周囲環境として,設置場所温度が高い,冷却水温度が高いということはよくあることです。
さらに,一番多い例は水垢といわれるものが,オイルクーラー内の冷却水パイプ内面に付着して,熱伝導率を下げていることです。この場合は管内清掃というメンテナンス作業を実施してください。
周囲環境を含めて,理論的に不適なときはオイルクーラーのタイプを変えるなど,抜本対策を講じてください。
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