潤滑油そこが知りたいQ&A

保全費の削減方法 | ジュンツウネット21

保全費を削減せよといわれました。どうすれば良いのですか。適切な保全費はどのくらいという,目安があったら教えて下さい。

解説します。

各社事情がありますので難しい問題です。まず,保全費がどのように使われているかを明確にすることが大切です。

1つの進め方を紹介します。

1.保全費を分類し,それぞれの費用を明確にする。

保全費分類方法の例
 (1)設備別
 (2)保全担当者別
 (3)労務費(社内労費,社外労費),材料費
 (4)目的別(修理,改善など)
 (5)その他把握しておきたい項目(問題点を見つけるために)

その他の事例
 a. 点検,給油,調整費
 b. 定期修理費
 c. 大修理費
 d. 突発修理費
 e. 予備品組み立て費
 f. 特別工事費

2.費用の多い項目,修理回数の多い項目について,順次その内容を調査する。

 (1)この結果から修理回数が多く,設備が不安定のときは信頼性向上のための改善を計画し実行する。
 (2)修理方法が悪いときは修理方法を改善する。
 (3)修理しにくいために工数が多くかかると思われたときは保全性の向上のための改善を実施する。
 (4)部品に疑問があるときは調査して改善する。
 (5)各種事情で,一時的に多くかけた費用。これは別勘定とします。

この方法はオーソドックスなもので時間と手間がかかります。根気の要る仕事です。

メンテナンスは生産の量と質を確保するためのものですから,毎年目標を掲げ,積極的な活動として攻めのメンテナンスを実施して行かなければならないものです。この活動費用が保全費です。したがって極めて政略的なものです。むやみに増減することはできません。

工場の利益計画の中で生産量とともに保全費も決定すべきものです。今期の生産量,それによる利益を考えてどれだけの保全費が許されるかを見極めるものです。メンテナンスは設備に対する一種の投資ですから,事情によって使い方を工夫せねばなりません。このような意味で大まかにかける費用とかかる費用に分けて考えるのも頭の整理になります。すなわち,かかる費用はなるべく減らす方向で対策を実行する。かける費用はそのときの経済情勢で増減することになります。理想的なイメージを図1に示します。

理想的な保全費推移
図1 理想的な保全費推移

具体的例として,一時的に保全費削減を要求されることがあります。この場合は生産量が減っているなど環境が変わっていることがあります。生産に必要な設備稼働時間を設定し,見合った保全費にするべく,保全費分類に従って得た過去のデータから,定期点検,定期取替工事の周期を伸ばしたり,今すぐやる必要はない工事を延期など考えられます。しかし,これら一時避難的な対策はきちんとフォローし,後始末をすることが大切です。

保全費の適正値はオーソライズされたものはありません。その設備に期待すること(製品の質,量,いつまで使用するか)を踏まえて,必要十分なメンテナンスを進めることですが,その時々製造業として成り立つ保全費でなければなりません。設備が生産の主役である場合は,企業の業績を見ながらかける費用として保全費をかけることもあります。したがって,これで良いという値は決まってなくて,それぞれ企業のオプションです。

理想的には前に述べたように企業戦略に従ってメンテナンス部門の活動目標(設備稼働率の向上,保全費の削減)を掲げて,それに向かって活動を進めることです。

アーステック



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最終更新日:2022年12月1日