減速機のトラブルで困っています。ほとんどの減速機で歯車の摩耗,ピッチングが発生しております。原因と対策を教えてください。
解説します。
歯車の摩耗,ピッチングは減速機で一番多く発生するトラブルです。原点に戻って,冷静に判断して,対策を講じてください。
歯車の摩耗とピッチングの原因は,基本的には潤滑油の質や給油法の不適正,あるいは劣化です。このような場合は粘度の高い潤滑油を採用するとか,歯車への潤滑状態を改善するなどで防止することができます。しかし,現実にはそう簡単なケースはまれでいろいろな原因が混在しております。そこで,主な原因と対策を挙げておきます。
(1)過負荷の防止
よくある事例で,設計時点の使用を超えて過負荷で運転されているケースがあります。いろいろな計器がありますので,実際の軸トルクを測定して,許容伝達馬力を超えている場合は,過負荷防止策を講じてください。もし事情が許すならば,歯車の強度アップを図ってください。過負荷防止策の事例を挙げておきます。
- モーターの加速・減速特性を緩和する
- スリップクラッチの採用
- 板ばね内臓カップリングの採用
- シヤーピン付カップリングの採用
(2)潤滑油管理の徹底
油温,給油圧力,給油量の日常点検を徹底することはもちろんのことですが,潤滑油の劣化,金属粉など異物混入,水分の混入は,歯車に致命傷を与えます。定期的に分析するなど潤滑油そのものの質の管理を徹底してください。また潤滑油の劣化判定分析に合わせて,フェログラフィ法を併用すれば歯面損耗の予知ができ,大事故の防止策として有効です。
(3)歯当たり修正
歯当たりが悪いからといきなり手をつけるのではなく,まず歯車の取付け位置および歯車の軸平行度に誤差がないかを確認することが大切です。実際の現場では本来正しくなければならない根本的なことが間違っていることがあります。誤差に問題があれば正しい状態に修正してください。
歯当たりの修正は原則として歯切り工作機械による機械加工修正が好ましいといえます。しかし,現場では時間的制約もあり,理想どおりにできないこともあります。そこで,手修正作業について簡単に述べておきます。
1.まず歯たけ方向の歯当たりは歯形に誤差があることが考えられます。騒音の主因になるものです。次いで歯すじ方向の歯当たりに着目します。この場合軸平行度に誤差があるか,歯車工作時の歯すじ精度管理不良が考えられます。いずれの場合も極度の片当たりのときは,文句なしに歯切り工作機械による機械加工で修正する必要があります。歯当たり基準をやや外れる程度の片当たりは手修正で済ませても良いでしょう。
2.手修正の場合は,大歯車よりも精度が良いはずの小歯車を基準として,赤当たりをつけながら大歯車の歯面を油砥石,研磨布,スクレーパー,細目ヤスリ,ハンドグラインダーなどで,歯形を崩さないように慎重に歯当たりの強い部分をまんべんなく,各歯面を少しづつ均一の量で逃がして行き,歯当たりの状態を改善します。
3.ウォームギヤなど特殊なものについては専門家の意見を聞いてください。
(4)バックラッシュの修正
バックラッシュが大きいと,いろいろな歯車事故につながります。
平歯車やはすば歯車のバックラッシュはJIS B 1703に規定されています。かさ歯車は日本歯車工業会規格JGMA122-01に規定されています。なお汎用歯車(JIS 3~5級)では,おおよその目安として(0.04~0.06)×モジュールでバックラッシュが求められます。
コンディションモニタリングBOX
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コンディションモニタリング機器の紹介
解説 コンディションモニタリング
- 設備診断技術の動向と今後の展望
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IHI 小林 英夫 - 原子力発電プラントにおける設備診断の現状と課題
東芝 渡部 幸夫 - 鉄鋼プラントにおける設備診断の現状と課題
新日本製鐵 村山 恒実 - 化学プラントにおける回転機設備診断機器の有効な活用法
三井化学 三笘 哲郎 - 化学プラントにおける設備診断の現状と課題
昭和エンジニアリング 里永 憲昭,梶原 生一,山路 信之,三重大学 陳山 鵬 - 地震時のエレベーター自動診断・自動復旧システムの開発
三菱電機ビルテクノサービス 西山 秀樹 - 設備診断技術を設備管理にどう活かすか
新日本製鐵 藤井 彰 - 振動診断のメカニズムと特徴,今後の展望
三重大学 大学院 陳山 鵬 - AE診断法とその特徴,今後の展望
THK 吉岡 武雄 - 超音波診断のメカニズムと特徴,今後の展望
高知工科大学 竹内 彰敏 - 音響診断のメカニズムと特徴,今後の展望
広島大学 大学院 中川 紀壽 - 潤滑油測定のメカニズムと特徴,今後の展望
福井大学 大学院 岩井 善郎