歯底にクラックが見つかりました。あまりひどくないので取り替えるまで応急処置をしたいと思います。
解説します。
歯底にクラックが発生することは正常ではありません。強度,組み立て,運転上になんらの問題がありますので,原点に立ち戻って調査し,原因を取り除いた上で応急処置を実行して下さい。
事例を紹介します。クラックの発生した歯車の仕様を表1の中の既設品に示します。
表1 歯車の仕様比較
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図1にクラックの状況,図2に補修時の状況を示します。
図1 ピニオンギヤのクラック状況 |
図2 ピニオンギヤの補修状況 |
(1)クラックの除去材質を考慮して余熱をしてガウジングで除去する。
(2)使用溶接棒低水素系高張力鋼用を使い,直前に300~450℃で乾燥する。
(3)熱管理母材の炭素当量(Ceg)を考慮して350~450℃に余熱を行い,溶接層間もその温度を保持する。
(4)ピーニングの加工1層目を除いて,溶着金属の各層においてピーニングを施工する。
(5)歯形の仕上げ補修を行う前に転写しておいた歯形をゲージとして,歯面をハンドグラインダーなどで仕上げる。
(6)検査歯形仕上げ後にMT(磁粉探傷試験)を行う。
なお,組み込み時に歯当たりを修正し,バックラッシュを確認する。クラックの溶接補修をすると,補修箇所の疲れ強さが低下するので,恒久対策ではなく,あくまでも応急的な処置であることを前提としてください。
この事例の場合は最終的には表1の改造品に取り替えました。
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