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スピンドルカップリングの焼き付きトラブル | ジュンツウネット21

減速機とロールの間にスリッパータイプのスピンドルカップリングが使われております。頻繁に摩耗するために時々取り替えておりますが,取替え直後に発熱,焼き付きがあり,再び取り替えることがあります。原因,対策を教えてください。

解説します。

スリッパーカップリングは図1に示すようにピンを回転の中心として軸心の傾斜機能(傾斜角β)とaを回転の中心とした軸心の傾斜機能(傾斜角α)とをスリッパーの摺動を介して組み合わせ,回転力を伝達しているものです。

スリッパーカップリングの構造
図1 スリッパーカップリングの構造

このタイプのスピンドルカップリングは,構造が簡単で,比較的大きな負荷に耐えることができるため,低速,高トルク用として広く用いられております。

しかし,このことがかえって,材質,形状に関する設計上の問題から強度不足によるトラブルの発生を生じさせることがあります。さらにこのタイプのカップリングには運転中の潤滑剤供給が不可能な上に潤滑剤の保存が難しいという欠点があります。

したがって,油量不足,油膜切れによる摩耗現象が発生し,寿命を短くする危険があります。

 この対策としては

(1)粘度の高い潤滑剤をできるだけ多く,確実に摺動面に供給する
(2)カップリングの使用条件(回転数,環境,運転法など)を十分検討したうえで,効率の良い潤滑条件を設定する
(3)潤滑剤シール方法を検討する

などですが,大きな事故を未然に防止するためには,各部の摩耗量ギャップの管理も大切なことです。

参考のためにスリッパーカップリングのトラブルとその対策方法を表1に示しておきますが,潤滑剤,シール,カップリング材質など多方面にわたっての高度技術が必要です。

現状把握をきちんとした上で,専門メーカーの指導を仰ぐことが間違いのない進め方です。

表1 スリッパーカップリングのトラブル対策
トラブル部位と状況
原因
対策
カップリングわに口部 割損(特にアリ溝部) 強度不足,形状不良 ○材質強度アップ,コーナーRの増加
スリッパー摺動面異常摩耗 潤滑不良 ○給油脂量および頻度の見直し
○給油脂方法の改善・油脂質の変更(粘度,ちょう度アップ)
○耐摩耗性材質への変更および表面硬化処理の施工
スリッパーメタル 割損 強度不足 ○材質強度アップ(特に耐衝撃性)
各部のギャップ増大 ○適正摩耗量,ギャップの維持
異常摩耗 潤滑不良 ○給油脂量および頻度の見直し
○給油脂方法,油脂質の改善
○耐摩耗性材質への変更
○油溝の改善
スケール,水等の混入 ○カバーの設置等により混入を防ぐ
発熱,焼付き(取替え直後多い) 潤滑不良 ○上記の潤滑不良と同様
カップリングとの当たり不良 ○すり合わせの実施および精度アップ

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最終更新日:2022年11月29日