油圧装置の作動油漏れをやかましく言われますが,作動油の価格は比較的安いので,人手をかけて漏れを防止するより,漏れたら作動油を補給したほうが経済的だと思うのですが。
解説します。
根本的に間違った考えです。
人間の体から血が少しづつにじみ出る,わずかな血便,わずかな血尿のとき,たいしたことはないどうせ次々に血は作られるのでかまわないというのとおなじです。これは大病の前兆かもしれないのです。
機械設備の場合,潤滑剤は特に重要な箇所に供給されます。しかも漏れないことを前提に供給されます。油圧設備の場合は作動油を介して,力を伝達して効力を発揮しているわけです。漏れることは大きな事故の前兆です。
まず,作動油は安価であるという考えを変えてください。漏れを補充するために作動油を補給するときは,作動油そのものの価格の3~4倍の費用がかかっていることを認識してください。
すなわち,作動油補給には
(1)作動油の費用
(2)作動油の保管費用
(3)補給するための費用
(4)漏れた作動油を安全に処置する費用
(5)漏れにより汚れた設備の清掃費用
などいろいろな費用がかかっているわけです。次に油圧設備のメンテナンスのスタートは,作動油の漏れ防止から始まります。
油圧設備は作動油が漏れないことで油圧を一定にして有効に機械を動かすものです。漏れていることは油圧の不安定,供給量の低下をきたし,計画どおりに設備が動かないことだと判断できます。
したがって,漏れは完全に防止しなければなりません。
一方で,この油圧設備から漏れがなくなるように,きめ細かな点検を実施すると設備を正しく点検するセンスが養われて,作動油漏れ発見以外に細かな設備の異常を発見できるという実例があります。
工場の設備メンテナンスのレベルを簡単に見るには,油圧設備の管理状態を調査すればよいといわれる所以です。参考のために作動油の漏れ量を管理する目標となる数値HFIの出し方を紹介しておきます。
HFI=年間作動油補給量/タンク容量
たとえば,HFIが2であるということは,年間に作動油タンクが2回入れ替わったことになります。
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解説 コンディションモニタリング
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