潤滑油そこが知りたいQ&A

ギヤーポンプのトラブル | ジュンツウネット21

古いギヤーポンプですが,軸漏れもなく外観上はどこも悪くないのですが,どうも性能が落ちたようです。考えられる原因とその対策をお願いします。

解説します。

ギヤーポンプのトラブルについて

ポンプ内部リークによる容積効率の低下だと思います。一般的には,歯車側面からの漏れ,歯先からの漏れ,かみ合い側面からの漏れなどが大きくなったためです。

すきまは,「熱膨張代+加工精度」で決定され,狭いほど効率は高くなります。漏れが増加する原因として,潤滑油の粘度低下(劣化,油温の上昇),すきまの増加が挙げられます。前者は潤滑管理の徹底で防止することができます。

(1)すきまの増加

 すきまの増加によるポンプ効率の低下は,ポンプの寿命の目安となり,一般には初期性能の10%程度が限界といわれております。すきまが増加する原因としては

  1. 吐出側と吸い込み側の圧力差による軸のたわみ
  2. 軸受部の摩耗による軸の片寄り
  3. 油中の異物による摩耗

などが考えられます。

図1に,軸に作用する圧力分布を示しますが,この圧力差により軸は図中の矢印の方向に弾力曲げ変形を起こします。

この場合,軸受間距離が長くなると変形も大きくなり,ケーシングと歯先の接触が高くなるため,ケーシングの摩耗が助長されます。

図2は,軸受部の摩耗によるケーシング摩耗を示します。軸,軸受,あるいはハウジングが摩耗した場合,軸は圧力差により矢印の方向に片寄ります。これによりケーシングと歯車の接触圧が増加し,ケーシングの摩耗が助長されることになります。

これらの摩耗は通常ゆるやかに進行するが,油中の異物が多い場合は急速に進行します。

軸のたわみによるケーシングの摩耗
図1 軸のたわみによるケーシングの摩耗
軸受部の摩耗によるケーシング摩耗
図2 軸受部の摩耗によるケーシング摩耗

(2)効率低下したポンプの修理

効率低下にはいろいろな部分の摩耗が原因となりますので,歯車,軸受ばかりでなく,軸やケーシングなどのチェックも厳重に行い,摩耗しているときはすべてを交換することになります。

(3)吸い込み抵抗による効率低下

歯車ポンプはピストンポンプなどと比較して,許容吸込み真空度が高いが(-40cmHg),吸い込み側の抵抗が著しく大きい場合や,ポンプ速度が大きい場合は,吸い込み困難となり,効率が著しく低下することになります。これを防止するには次の点に留意する必要があります。

  1. 配管抵抗を少なくする(管径を大きくし,管の長さを小さくする)
  2. ポンプ設置位置を下げる
  3. 潤滑油の温度変化による粘度変化を十分考慮する(タンクに温度調整装置がないときは特に注意する)

アーステック



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最終更新日:2022年11月28日