製造ラインにたくさんのゴムロールを使っております。1本のロールの寿命を見ると結構長いようですが数が多いので毎日のように取り替えております。よりすぐれたメンテナンスでロール寿命をさらに延ばし,全体としてロール取替え作業を少なくしたいと思っております。ゴムロール保全の極意を教えてください。
解説します。
ゴムロールのメンテナンスについて
ゴムロールは製品に直接接するため,製品品質保証のためにも大切な設備です。
管理項目は軸を含んだ鉄心,表面のゴム,据付精度が主なものです。
(1)軸ジャーナル部の管理
軸のベアリングはめ合い部が摩耗すると,ベアリングのインナーレースと軸の間にすべりが生じて,回転不良の原因となります。この摩耗はベアリング脱着作業の悪さ,ベアリングと軸のはめ合い寸法不良などにより発生します。
ゴムロールはライニングを繰り返して使われますが,この時,ベアリングを外す必要があり,ベアリングの抜き取り・取り付け作業回数が多くなります。そこで,抜き取りには図1に示すような専用治具を正しく使って,無理な抜き取りをしないよう注意しなければなりません。
図1 ベアリング抜き取り治具 |
また,たとえ丁寧に抜き取り作業を実施したとしても,軸摩耗は発生します。必ず測定し,許容限界を超えたときは,ジャーナル部に溶射,溶接肉盛,めっきなどの再生加工により,元の寸法に戻してください。
(2)軸の曲がり,振れ
軸の変形はベアリング焼損,ロールの振動,ゴム研磨時のロール真円度不良・円筒度不良などのトラブルを発生させるものです。この軸変形はロール取替え作業不良,ベアリング脱着作業不良,圧下荷重のかけ過ぎなどにより発生します。割合華奢な構造をしていますので,丁寧に正しい作業をしてください。
(3)鉄心のバランス
ロールのバランスが悪いと,ロール回転むら,振動発生により製品に悪影響を及ぼします。一般的な目安として,ロール回転数が1000rpm以上では動バランス補正が必要で,これ未満のものは静バランス補正をします。なお,バランス補正はゴムライニング前に実施しなければなりません
(4)ゴムの研磨
ラインのロールは,通常ライニング径(廃却径)に達するまで,研磨して繰り返し使用します。したがって,この研磨作業は非常に大切です。それぞれの用途で違ってきますが,一般的なロール研磨時の注意事項は次のようなものです。
- 表面形状,表面粗度の指定
- 真円度,円筒度,触れの指定
- 複数の組み合わせで使用する場合はロール外径のペア差の指定
- 研磨送りマークの検査
- 総合検査
(5)ゴムロールの据付
ロール設置本数が多い連続ラインでは,ロール取替え直後,製品がまっすぐ走らずトラブルになることがあります。これはロール据え付け不良によるものです。高速になればなるほど厳しくなります。
正しいロール据付が大切ですので,据え付け時の検査項目と検査方法を図2に示します。
コンディションモニタリングBOX
メーカー別製品一覧
コンディションモニタリング機器の紹介
解説 コンディションモニタリング
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IHI 小林 英夫 - 原子力発電プラントにおける設備診断の現状と課題
東芝 渡部 幸夫 - 鉄鋼プラントにおける設備診断の現状と課題
新日本製鐵 村山 恒実 - 化学プラントにおける回転機設備診断機器の有効な活用法
三井化学 三笘 哲郎 - 化学プラントにおける設備診断の現状と課題
昭和エンジニアリング 里永 憲昭,梶原 生一,山路 信之,三重大学 陳山 鵬 - 地震時のエレベーター自動診断・自動復旧システムの開発
三菱電機ビルテクノサービス 西山 秀樹 - 設備診断技術を設備管理にどう活かすか
新日本製鐵 藤井 彰 - 振動診断のメカニズムと特徴,今後の展望
三重大学 大学院 陳山 鵬 - AE診断法とその特徴,今後の展望
THK 吉岡 武雄 - 超音波診断のメカニズムと特徴,今後の展望
高知工科大学 竹内 彰敏 - 音響診断のメカニズムと特徴,今後の展望
広島大学 大学院 中川 紀壽 - 潤滑油測定のメカニズムと特徴,今後の展望
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