潤滑油そこが知りたいQ&A

大型減速機の騒音トラブル | ジュンツウネット21

最近,大型減速機の音が大きくなり,振動も激しくなってきたような気がします。大きな事故にならないうちに処置したと思いますが,重要な個所に使用されているため長期間停止できません。とりあえずの応急処置を教えてください。

解説します。

大型減速機の騒音トラブルについて

主要設備に使われている容量750kWの大型減速機の事例を紹介します。

重要設備であることから,振動計,マシンチェッカー,軸受温度センサにより定期的に点検診断しておりました。振動値が上昇したことから,点検間隔を短縮して傾向を調べておりましたら,2ヵ月後に音響,振動共に上昇し,このままでは大事故になると考え,18時間の休止チャンスを利用して,開放点検しました。軸受外輪の回り止めノックピンが折損し,軸受ハウジングが1~1.2mm摩耗,またギヤ歯面に歯当たり不良による,強いピッチングが発生しており,早急に修理を要する状況でした。しかし,完全修理には2~3ヵ月かかりそうなので,とりあえず応急処置を施すべく検討しました。

まず,ハウジングの摩耗状況は図1に示すように,上下ハウジングとも,回転方向負荷側に,ベアリング幅で楕円状の溝摩耗ができていました。これに対して,肉盛溶接では熱歪と,仕上げ精度に問題があるので,図2に示すように摩耗部全体ではなく,約6mm幅の線肉盛溶接としました。溶接棒は予熱不要,作業性良好,硬度が得られるということで,硬化肉盛用溶接棒を使用しました。

軸受ハウジングの摩耗状況
図1 軸受ハウジングの摩耗状況
軸受ハウジング摩耗部肉盛状況
図2 軸受ハウジング摩耗部肉盛状況

溶接部手仕上げは楕円摩耗を生かして,摩耗していない面を基準面にし,ベアリングアウターレースの外面に光明丹を塗って,すり合わせしながら棒グラインダーで施工しました。特に真円度および円筒度に注意しました。

ギヤの歯面ピッチングについては歯当たりが強く,ピッチングが発生した面を,サンダーで手仕上げ研磨して,歯当たりが前面にのびるようにしました。

なお,ベアリングアウターレースには回り止めノックピンをしっかり取り付けました。

手回しでギヤの回転状況,ギヤの歯当たり,バックラッシュの確認をし,無負荷運転に入りました。各軸受け部組み込み温度センサにより,軸受温度カーブが一定になるまで約2.5時間運転し,音響,振動とも異常がないことを確認したので,正式に運転を再開しました。この間14時間の設備停止でした。6ヵ月後も温度,音響,振動に異常はありません。ただし,ケーシングなどを準備して,早い時期に完全修理を実施する予定です。

アーステック



「技術者のためのトライボロジー」新発売!
「技術者のためのトライボロジーお申し込みはこちら

「潤滑剤銘柄便覧」2025年版 発売中!
「潤滑剤銘柄便覧」2025年版お申し込みはこちら

「初めての転がり軸受」 新発売!
「初めての転がり軸受」ご注文はこちら

「やさしいグリースの話」発売中!
「やさしいグリースの話」お申込みはこちら

モレスコテクノ
○モレスコテクノ
潤滑油・エンジン油・燃料油・切削油の分析
https://www.morescotechno.co.jp/

ジェーシーサービス
○ジェーシーサービス
省エネルギー,省資源を通じお客様と地域環境との潤滑剤になることを目指しています
http://www.jcs-oil.jp/

最終更新日:2024年12月19日