われわれの工場では,減速機,巻き上げ機,運搬機など産業機械があり,多くの歯車が使われております。しかし,潤滑油はメンテナンス作業の合理化と経費削減で油種統一が図られております。時々開放点検しておりますが,歯車の種類によって,損傷状態が違うように感じます。負荷その他稼働条件の差もあると思いますが,油種を無理して統一していることにも,原因があるような気がします。特にウォームギヤが心配です。基本的な考え方を教えてください。油種統一を見直してみたいと考えます。
解説します。
油種統一の問題点について
歯車のかみ合い面の運動をすべりの点で区別すると次の二つに分けることができます。
1. 歯車に沿ってのみすべりが作用するもの(平歯車,はすば歯車,やまば歯車,傘歯車など)
2. 歯形,歯筋方向の二つにすべりが作用するもの(ウォーム歯車,ハイポイド歯車など)
ウォーム歯車は歯車のうち,そのかみ合いはすべりが大部分を占めているので,すべり速度が大きく潤滑条件として極めて過酷であり,摩擦損失が大きいため一般工業用ギヤ油と区別してウォームギヤ油を使うようメーカーから指示されるものです。
歯車用潤滑油の選定は,歯車においても軸受と同様のことがいえます。すべり合う面の間において
G=Zv/P (G:摩擦係数,Z:潤滑油の粘度,v:すべり速度,P:荷重)
の関係が成り立ちます。Zv/Pの値が小さい場合には境界潤滑状態にはいり,油膜の破断による金属接触,融着を起こすことになります。
したがって,歯車用潤滑油選定にあたっては次の種々の条件を十分に検討することが必要です。
(1)歯車の種類:平歯車,はすば歯車,ウォーム歯車など
(2)運転条件:馬力,回転数,荷重,減速比など
(3)給油方法:循環,油浴,塗布,スプレーなど
(4)周囲温度
以上が一般的なことですが,ウォームギヤ油選定方法については,いろいろな方法が発表されておりますので,実際の機械に適応して十分検討の上,適油を選定してください。
代表的な方法には(1)AGMAによる方法,(2)Wellwork社の計算による方法,(3)CRAINE氏の推奨する方法,(4)WATOSON氏による方法 などがありますが,詳しくは専門書を参考にするか,潤滑油メーカーに相談してください。
なお,AGMAによる選定表を表1に示します。
表1 AGMA Noによるウォームおよびコーンウォーム歯車用潤滑油選定表
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