ファンの軸受振動が大きくなりました。明らかにグリースの注し忘れで焼損していました。早速取り替えましたが,4ヵ月後に再び運転音が大きくなりました。加速度値の増加も確認しました。ベアリングは新品だし,グリースもきちんと入れてあります。原因として何が考えられますか。
解説します。
ファン軸受の異常振動について
現場を見ないとはっきりしたことはお答えできませんが,低周波振動も測定してください。異常があれば,ローターシャフトの曲がりがあります。シャフト曲がりによる低周波振動で高音が発生していることがあります。早急に処置しないとベアリング損傷となります。
その他,振動が確認されたときは,とりあえずグリースを給脂することが常識となっておりますが,正しく処置をしないと大きな事故につながることがあります。
いくつかの注意事項をあげておきますので,参考にしてください。
1. 転がり軸受部の振動加速度が増加傾向を示したとき,直ちにオーバーホールするのは早計です。単に潤滑が悪くベアリングには損傷がないときも,加速度値が増加することがあります。まず,簡単にできる給脂を実行してください。その後よく観察してから次の処置をとってください。
2. 給脂した結果,以前の正常値に較べて加速度値が低下し,そのまま変化がなければベアリングは正常です。しかし,ふたたび増加することがあります。この場合はあきらかにベアリングが損傷しておりますので,取り替えてください。すなわち,一時しのぎとしてグリースを注したときは,しばらく観察することが常識です。
3. 一時的に給脂すると,転がり軸受の損傷の初期では加速度値が増加しますが,末期になると,むしろ減少傾向にあるといわれております。それは軸受の鋭角損傷が,転動体が何回も衝突して鈍くなってしまった結果,衝撃的な振動から緩やかなものに変化したと考えられます。たとえば,何回か給脂しても,あまり効果がないときは,この現象だと判断して,軸受を点検してください。
4. いくつかの軸受が並んでいるとき,一度に全部の軸受に給脂しないで下さい。1ヵ所給脂して,振動を測定し加速度値の変化を調査してください。図1に示すように,(1)だけ給脂し,(1)の損傷を見つけ,交換しました。その結果(2)の振動も治まりました。
図1 2ヵ所の軸受で同時に振動が増加した事例 |
コンディションモニタリングBOX
メーカー別製品一覧
コンディションモニタリング機器の紹介
解説 コンディションモニタリング
- 設備診断技術の動向と今後の展望
大阪市立大学 大学院 川合 忠雄 - ガスタービンにおける設備診断の現状と課題
IHI 小林 英夫 - 原子力発電プラントにおける設備診断の現状と課題
東芝 渡部 幸夫 - 鉄鋼プラントにおける設備診断の現状と課題
新日本製鐵 村山 恒実 - 化学プラントにおける回転機設備診断機器の有効な活用法
三井化学 三笘 哲郎 - 化学プラントにおける設備診断の現状と課題
昭和エンジニアリング 里永 憲昭,梶原 生一,山路 信之,三重大学 陳山 鵬 - 地震時のエレベーター自動診断・自動復旧システムの開発
三菱電機ビルテクノサービス 西山 秀樹 - 設備診断技術を設備管理にどう活かすか
新日本製鐵 藤井 彰 - 振動診断のメカニズムと特徴,今後の展望
三重大学 大学院 陳山 鵬 - AE診断法とその特徴,今後の展望
THK 吉岡 武雄 - 超音波診断のメカニズムと特徴,今後の展望
高知工科大学 竹内 彰敏 - 音響診断のメカニズムと特徴,今後の展望
広島大学 大学院 中川 紀壽 - 潤滑油測定のメカニズムと特徴,今後の展望
福井大学 大学院 岩井 善郎