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回転軸摩耗の応急処置 | ジュンツウネット21

合成樹脂を生産しているプラントで大型層を使用しております。撹拌機が重要設備ですが,その回転軸のグランドシール部が長時間の使用による摩耗で液漏れを発生させることがあると聞いております。一時的にはグランドシールを取り替えることでしのげると思いますが,軸まで摩耗したときはどのような処置をしたら良いですか。

解説します。

回転軸摩耗の応急処置について

補修方法は(1)攪拌機軸を新作して取り替える,(2)軸を抜き取り溶射,メッキなどで補修,(3)軸抜き取りスリーブなどに改良する,(4)現場で溶射補修する などいくつかが考えられ,それぞれにメリット,デメリットがありますが,今回は短期間でできるというメリットを第1にして現場での溶射補修について紹介します。

金属溶射法には大別して電気式溶射法,ガス式溶射法,粉末式溶射法の3つがあります。現在は溶射技術が大変向上しているので,各メーカーに相談してください。ここでは比較検討して,ローカイド溶射法(ノートン社)を採用し,溶射材料は酸化クロームを使いました。

なお,溶射後の寸法精度を確認するために,試験軸を作って実験しました。

溶射の手順は表1に示すとおりです。

表1 溶射手順とポイント
 
現場溶射手順
ポイント
1
金属溶射軸の養生 層内危険物の除去,不活性ガスによるパージ,溶着させる部分以外の養生
2
下地処理(軸を1rpmで回転) サンドブラストによる軸部の表面地肌出し施工(最終溶射材の溶着強度を出すため)
3
アンダーコーティング(軸を10rpmで回転) 材質はAl-Ni系合金材,下地材と最終溶射材間の密着性アップを図る。厚さは0.3~0.5t
4
表面ローカイド溶射(軸を10rpmで回転) 材質は酸化クローム系耐摩耗材で厚さは0.3t程度を目標とする
5
表面仕上げ(軸を10rpmで回転) カップブラシによる表面仕上げ。目標精度を設定

さらに,施工上の注意点は,(1)溶射部位の表面が荒れていれば,サンドブラスト後,アンダーコーティング途中で軸径を測定しながら,ヤスリ等で滑らかにしてから表面溶射に入れば,仕上げ寸法精度が向上する,(2)表面溶射材の諸物性を発揮させるためには,下地処理を完全に実施する 
ことです。

ちなみにこの補修作業は2日間で終了しました。

アーステック



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最終更新日:2022年11月28日