当工場では同じような設備が並んでおります。代表的なものを選んでグループ代表として測定しております。最近時々数値が変動して読み取りにくくなることがあります。また,一台だけ測定値が大きく変動することもあります。全体の傾向管理としては最大,最小,中央値のどの値を残してよいか,迷っております。
解説します。
振動測定値の変動について
測定値は最も正しい数値を出していると考えてください。測定値が変動する原因には,ベルトのスリップ,歯車軸のミスアライメント,流体継手のアンバランスなど回転機構異常や他部位からの誘導があります。
測定値が変動し始めたら,回転機構の異常をチェックしてください。これは測定していることが大変役に立ったという事実を示しております。
その他データ管理に関する注意事項を2,3あげておきます。
(1)振動測定データにより設備の異常を発見したり,振動値の傾向管理を進めておりますが,多くの場合振動値の許容範囲が与えられております。許容範囲を超えたときだけ異常として報告されることになっております。しかし,データはいろいろなことを語りかけておりますので,数値だけを観察していてはその語り掛けを受け止めることはできません。図1に示すように必ずグラフにして,傾向の変化を読み取り,必要な場合は,精密点検などに移動してください。
図1 データの変化を数値のみとグラフにした時の比較 |
(2)回転数が一定で運転される設備でも,負荷変動があったり,回転機構に異常があったりすると簡易診断器の瞬時値表示が変動してしまい,判断に迷う場合があります。このような場合は,図2のようにペンレコーダーなどで連続記録をとり,瞬時の変化と全体の傾向をつかみそれぞれの現象にあった処置をとるようにしてください。
図2 ペンレコーダーで連続記録した事例 |
(3)一定周期で変動する振動の場合,たとえその数値が許容値内に入っていても見逃してはいけません。歯車のわずかなミスアライメント,ベルトのスリップなどが原因の振幅変調や流体継手をはさんだ1次側と2次側のアンバランス,近接した回転数の設備相互間の干渉などを原因とするうなりによるものがあります。データはすべてのこと知らせてくれるという原則に従って,原因を究明し対策をとりましょう。
コンディションモニタリングBOX
メーカー別製品一覧
コンディションモニタリング機器の紹介
解説 コンディションモニタリング
- 設備診断技術の動向と今後の展望
大阪市立大学 大学院 川合 忠雄 - ガスタービンにおける設備診断の現状と課題
IHI 小林 英夫 - 原子力発電プラントにおける設備診断の現状と課題
東芝 渡部 幸夫 - 鉄鋼プラントにおける設備診断の現状と課題
新日本製鐵 村山 恒実 - 化学プラントにおける回転機設備診断機器の有効な活用法
三井化学 三笘 哲郎 - 化学プラントにおける設備診断の現状と課題
昭和エンジニアリング 里永 憲昭,梶原 生一,山路 信之,三重大学 陳山 鵬 - 地震時のエレベーター自動診断・自動復旧システムの開発
三菱電機ビルテクノサービス 西山 秀樹 - 設備診断技術を設備管理にどう活かすか
新日本製鐵 藤井 彰 - 振動診断のメカニズムと特徴,今後の展望
三重大学 大学院 陳山 鵬 - AE診断法とその特徴,今後の展望
THK 吉岡 武雄 - 超音波診断のメカニズムと特徴,今後の展望
高知工科大学 竹内 彰敏 - 音響診断のメカニズムと特徴,今後の展望
広島大学 大学院 中川 紀壽 - 潤滑油測定のメカニズムと特徴,今後の展望
福井大学 大学院 岩井 善郎